私たちの声

電力会社による系統接続の「保留」に強く抗議し、改善を求める提言


はじめに


 今年9月に九州電力をはじめ、東北電力、北海道電力、四国電力、沖縄電力の5社が突然、再生可能エネルギーの系統接続を「保留」=中断することを横並びに発表した。

 これは、再生可能エネルギーの発電事業を行おうとしている市民、事業者の側から見れば、再生可能エネルギーの発電にむけて、資金を集め、必要な資材の購入や借地の契約などをおこなってきた発電所づくりの事業計画が電力会社の都合で一方的に予定変更を余儀なくされ、場合によっては経済的損失が生じる重要な問題である。また、法的に「拒否」はできないので一時的な「保留」としているが再開時期を明らかにしていない。

原発ゼロ市民共同かわさき発電所は、この問題を以下の4点から検討し、国と電力会社の責任で改善するように求める。


1、日本政府が目標とする再生可能エネルギー比率20%(2030年まで)を堅持して対応を


 日本政府は2010年に「2030年のエネルギー需給の姿」を策定して、再生可能エネルギーの比率を20%まで高めることを掲げ、今年4月の「エネルギー基本計画」においても「これまでのエネルギー基本計画を踏まえて示した水準を更に上回る水準の導入を目指す」と定めている。

 それらの目標に対して、現在の再生可能エネルギー比率は、水力を除くと約2%にすぎず、さらなる普及促進が求められている。今回の電力会社の対応は再生可能エネルギーの普及に逆風となり、国民の間に再生可能エネルギーに対する不安や誤解を与える。これに対し日本政府は「再生可能エネルギーはさらなる普及をめざす」という決意を示して、早急に電力会社を指導して改善することが必要になっている。再生可能エネルギーは、純国産エネルギーであり、燃料を輸入に頼る火力発電等と異なり、発電によって国民の富が国外に流出することなく国内で循環する。日本経済の発展のためにも再生可能エネルギーの普及はさらに必要である。


2、本当にやむをえない措置なのか


九州電力等が「保留」した背景には、現在申請されているメガソーラーを中心とした再生可能エネルギー発電設備が全て建設され稼働した場合には、必要量を超える電気が作られてしまうという客観的な状況がある。

しかし、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(以下、FIT)に基づいて申請が出されている発電設備容量と、実際に発電が開始された発電量には大きな差があることが指摘されている。すなわち申請だけおこなわれ実態のない事業者、投機目的の申請も多いと言われており、申請ではなく実態に合わせて電力の過不足を調査すれば、まだ再生可能エネルギーの受け入れは可能である。

メガソーラーの売電価格は申請時ではなく売電開始時を基準に算定するよう改正することで、過疎地域に過剰な発電設備が集中する問題に歯止めをかけることができる。



3、太陽光発電は、メガソーラーも小規模分散型発電も同一基準にしてきたことが根本原因


今回の問題の根底には、FITの制度設計そのものの欠陥がある。FITによって普及したものは自然エネルギー全般ではなく、利益を得やすいメガソーラー、大規模な太陽光発電であった。

太陽光発電のメリットは、土地が乏しく他の自然エネルギーの活用が難しい都市部・人口密集地でも、自宅や工場の屋根の上などにソーラーパネルを並べ小規模地域分散型で、地産池消、個産個消の発電ができる点にあった。

しかし、メガソーラーも、私たちのような小規模分散型発電も一律に設定された、このためビジネスチャンスと捉えた企業等によって、過疎のすすむ九州や北海道に建設計画が集中して、電力の大規模な消費地ではない場所に発電設備が集中するという構造を生み出している。これが国の制度設計の問題であり、FITそのものの改善をとおして、都市部での小規模分散型太陽光発電の売電価格を優遇することが求められる。


4、発送電分離による地域分断の改善を


 日本は、送電網を10大電力会社がバラバラに所有しているため、電力会社間の電力融通の体制が極めて乏しい。また、電気の交流の周波数が東西で違うため、東西の電力の融通には変電設備が必要になっているという問題がある。

 EUでは多くの国で所有権分離による発送電分離がおこなわれ、自国内でも周辺国との間でも電力の融通ができる仕組みが作られている。

 技術的には、北海道や九州で発電した電力を東京で使えるようにする送電網をつくることは可能である。日本全体で電力を調整・融通する仕組みがあれば、さらに多くの再生可能エネルギーを九州や北海道等で生み出しても問題がなくなる展望がつくられる。

日本でも、2016年から「持ち株会社」として送電部門を分ける発送電分離がおこなわれるが、真に公正で中立的な運営がおこなわれるのか疑問がある。電力改革は、多様な事業主体の参加を促し、公共性のある送電網については電力会社から独立した形で発送電分離を行うべきである。電力会社による地域独占の壁を破り、国民全体の利益になるような送電網の整備や拡充、運用改善がさらなる再生可能エネルギーの発展に必要である。

 

最後に


電力会社各社は、これから原発を再稼働させることを前提とした試算にもとづき、再生可能エネルギーの許容範囲を計算しようとしている。しかし、福島原発事故は収束しておらず、原発ゼロが国民の多数派を占めているもとで、再稼働は許されない。福島の少なくない土地は放射性物質で汚染され、半永久的に使用できない状態となっている。原発ゼロを前提に再生可能エネルギーの許容量を設定すれば、さらに多くの再生可能エネルギーを受け入れることが電力会社は可能である。


川内原発の再稼働に反対し、再生可能エネルギーの推進を求める声明

 

原子力規制委員会は2014年9月10日、全国から寄せられた約1万7千通のパブリックコメントについて審議することもなく、それゆえ意見をほとんど反映することなく審査書を確定させ、九州電力の川内原発1・2号機が原発の新しい規制基準を満たしているとの審査結果を正式に決めた。

 

しかし、新規制基準は福島第一原子力発電所事故の原因も究明されない中で作られた不十分な基準である。また、9月27日に木曽の御嶽山が突然噴火したことからもわかるように、火山の噴火は予知予測がしがたい。川内原発の周辺にある阿蘇、桜島などの火山の危険性についても、考慮していないと専門家が指摘していることから不十分な基準となっていることは明らかである。このように不十分な基準への合格である上に、「安全ということは申し上げられない」と規制委員会の田中俊一委員長が明言している原子炉を再稼働することは、レベル7の過酷事故を視野に入れて再稼働することになる。川内原発が過酷事故を起こせば、吹き上げられた放射能は偏西風に乗って関西圏さらには関東圏にまで及び、被害が福島第一原発事故の被害を凌駕すると言われている。

 

さらに問題なのは、再稼働によって作り出される高レベル放射性廃棄物(死の灰)を、安全に長期間(10万年から100万年)保管する場所や施設の準備もないままに再稼働を進めることである。将来の日本人、いや世界の人々に膨大な経済的負担と精神的な負担を負わせるだけでなく、生涯にわたって消えることのない放射能汚染による健康被害の危険にさらすことになる。

 

日本は雨が豊富で無数の川を水が流れ下り、太陽はさんさんと照り、地下には地熱が蓄えられ、山は緑で覆われ、山の中腹から上では強い風が吹くというように、世界でもまれに見る再生可能エネルギーの宝庫である。長い年月と数兆円の費用をかけても見通しの立たない核燃料サイクルの開発を止め、その費用を再生可能エネルギーの開発と省エネルギー技術の開発や、多極分散型・省エネルギーの社会構造への移行を推進すれば、それらの分野で最先端になる潜在力を日本は持っている。

 

私たちは、川内原発をはじめとする全ての原発の再稼働に反対する。さらに再生可能エネルギーを中心とした、安全で安心して暮らせる社会の創設を強く求める。

 

2014年9月28日 原発ゼロ市民共同かわさき発電所